ソロス氏の目に映る中国経済

中国国家統計局は1月19日、2015年の国内総生産(GDP)は67兆7000億元と前年比で6.9%伸びたと発表し、その内、工業生産の伸びは6%、サービス業の伸びは8.3%と、中国経済に占める割合は初めて50%を超えて50.5%に達し、第12次5ヶ年計画で定めた47%と言う目標を3ポイント多く超えたことを明らかにしました。

続けて4月15日、同統計局は第1四半期のGDPを発表し、前年比の伸び率は6.7%で、その内第一次産業は2.9%、第二次産業は5.8%、第三次産業は7.6%と、第三次産業の伸び率は第一次、第二次産業を上回って中国のGDPの成長をけん引する主力産業になっていることを明らかにしました。

これについて昨年末から今年にかけて「中国売り」を繰り返してきた米著名投資家のジョージ・ソロスは「中国政府は大規模な失業を受け入れられないから、製造業の従業員をサービス業に転向させようとしている。これで金融危機の発生を先延ばしにすることはできるが、しかしこのことは危機の規模を更に拡大させることも意味することだろう。サービス業は進歩しているが、製造業失速の穴埋めをするには遥かに及ばない」と、中国経済の先行きに対する懸念を表明しました。

ソロス氏は、「3月、中国には大量の信用膨張が見られた。このことは景気回復のシグナルと喧伝されているが、私には警告のシグナルのように見えた。なぜなら中国はこれだけ多くの信用を持って景気を下支えしなければならないことを意味するからで、また更に多くの信用で持て初めて経済の減速を食い止めることができると私の目にそう映っている」と語りました。

これは先週、ニューヨークアジア協会(Asia Society)主催の「中国経済奇跡の終焉?」フォーラムで述べたもので「信用の膨張」とは、今月15日、人民銀が発表した第1四半期の融資残高のことで、同融資残は昨年同期比で13.4%増の144兆7500億元、純増量は同1兆9300億元も多い6兆5900億元、実体経済への人民元直接融資は4兆6700億で史上最高を記録したと言います。

ソロス氏は、「数年前米国もそうであったように、中国はいま信用の大幅な膨張を経験している。しかしこのような膨張は持続できるものではない。当面中国はこれを維持できるので、ターニングポイントはみんなの予想より遅くなるだろう。しかし、2005年、2006年当時も金融危機が訪れると警告した人もいたが、実際の危機は20007年、2008年に起きた」。

このように指摘したソロス氏は、人民元の為替を米㌦のみならずIMFのSDR構成通貨とのペッグについて、大きな進歩で競争的切下げの懸念を後退させたと評価し、中国企業の海外進出(買収や提携)について「これは受け入れられるべきことで、中国の企業は分散投資が必要で、資金の海外移転は問題解決の合理的手段だ」と肯定的な見方を示しました。

ソロス氏の発言に先だって、格付け機関が中国国債の格付けを引き下げたことについて、中国財政省の朱光耀副大臣はGDPに占める中国政府の債務の割合は40%という安全ラインを超えていないとして、「企業には一部リスクがあるが、これも企業のレバレッジを圧縮しなければならない理由の一つだ」と企業債務の証券化などの意義を強調しました。

中国経済の先行きに対して、投資家としてしっかり見守りたいと考えます。

 

 

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