心理戦の始まり 北控水務の事例

昨日東京恵比寿のレストラン、モナリザにて新春初の勉強会を行いました。景気後退が鮮明になり株式市場も波乱含みの幕開けで、人民元(為替)の行方と実施が近いとされるIPOの審査(認可)制から登録制への移行の影響や今後の見通しなどについてお話をさせてもらいました。

11日の『徐さんの中国株』では、「偶然の一致か、陰謀論か」を取り上げたところ、「狙いうちだとすれば目的は何でしょうか」とのメッセージをもらい、欧米株式市場の軟調さの責任転嫁と中国市場に資金が流出することを防ぐ意図も感じられる」との持論をお寄せいただきました。

人民元は昨年の8月11日にSDR構成通貨採用に備えて3%の切下げを行いました。その後、米利上げの前に人民元の為替基準を13種類の通貨からなるバスケット制(CFETS)を採用し、米利上げによる影響を最小限に抑えようとしていました。しかし市場の心理が一旦下がる予想となると、これを堰き止めることはなかなかできないのも実情で、このタイミングで中国経済の先行き悲観論が再燃されたのです。

今年に入り、オフショア市場での元安が加速し、香港の銀行間貸出金利(Hibor)が一時66%まで高騰。銀行から元を借り、米㌦を買う投機的為替差益を狙う動きが見られ、市中の元不足で金利が高騰した結果を招いています。

株式市場でも、昨年12月にWSJが水処理最大手の北控水務の会計処理に疑惑があるとしてレポートを発表したのに続き、昨日(14日)、香港に本部のある会計研究機関であるGMT Researchは同社の利益に水増しの可能性があるとしたレポートを発表しました。同レポートの指摘の一つに、同社債務の多くは外貨によるもので、人民元が20%でも切下げとなれば、それによる為替差損は2014年通年の利益を帳消しになる計算だということです。

これに対して、同社は本日、指摘に対して逐一反論し、またこの反論の前に、レポートが発表されるとすぐ、市場で自社株740万株を、そして執行役員以下4名の役員がポケットマネーで約70万株を買い増ししたと発表し、行動を以て経営に自信があることを内外に示しました。

北控水務を巡る攻防は少なくとも下記2点においてヒントになることがあるのではないかと考えます。

一つは米ドル建て債券の多い企業は、元の切下げで対策が必要であること、もう一つは下げ相場の流れで、悲観論が共感や共鳴を呼びやすく、空売りに絶好のチャンスであることです。

中国中央銀は昨日、公開市場操作で1600億元(約2兆8500億円)を市場に供給したと中国証券報が報じました。資金の流出と流動性不足に対応する措置だと見られます。

金儲けのチャンスがあるからこそ、狙いうちの価値があって外資が群がってきます。人民元も中国株も心理戦の攻防が始まるところだと見ていいだろうと考えます。

 

 

徐さんの中国株の最新記事