私有化に様々な理由が

山東羅欣(8058)は14日「私有化」する案を発表して、今月7日から取引停止していた同社株式が取引再開されました。私有化案は同社大株主と関係者がH株の流通株を17香港ドルで全数買い付ける内容で、取引停止前の株価12.9香港ドルより31.78%のプレミアムがあるため、取引再開後同社株が買われて最高で16.40香港ドルまで急騰しました。 

「私有化」とは、上場企業が自社株式を非公開(上場廃止)にするため、発行済み株式のうち、流通されている株を市場で買い戻すことの中国語の表現です。株式市場では一般的に公開買付(TOB)と言って、買付側が買付価格を提示して株主総会で議決をしてこれを実行するわけですが、個人株主として同案に対して反対する票を入れてもいいのですが、山東羅欣のケースですと、1.買付価格は同社上場来最高値に近い価格で、既存株主の大半は利益を出していること、2.買付側(大株主とその関係者)は60%以上の株式を抑えているため、反対票を投じても大勢にはほとんど影響が出ないだろうと思われることで、同社買付案がそのまま採択されるものと考えられます。 

中国(香港)市場での私有化は、山東羅欣は初めてではなく、最後でもないと思われます。記憶に新しいのは商業不動産最大手の「万達商業」(上場廃止)があります。同社は201412月香港メインボードに上場しましたが、わずか13か月後の20163月突然私有化案を発表しました。同社私有化の理由について、王健林会長は「香港市場の評価が低すぎる」とその不満をあらわにしています。同社は上場前後の5年間毎年30%以上成長しているにもかかわらず、PERはわずか6倍で、私有化発表の頃、4.8倍まで落込み、外資主導の香港市場で同社価値が全く反映されていないとIPO時の株価(48香港ドル)で上場廃止を決定しました。 

万達商業の私有化案と比較して20126月に上場廃止したアリババの私有化の理由はずっと「わがまま」です。公式発表ではありませんが、B2B事業は成長途中で、事業の方向転換や多角化など常に模索し、また迅速な意思決定が求められます。しかし、上場企業であるがゆえに、意思決定は都度株主総会の承認を得なければ前に進めることができないことに痺れを切らした同社上層部は上場廃止にしろということで、40香港ドル以上で投資されている投資家が多い中、IPO価格の13.5香港ドルで上場廃止を決定しました。当時のアリババ株で損した投資家が多いのではと推測されます。

一方、当社「中国企業情報」で取り上げた「銀泰商業」の私有化案はずっと「良心的」です。アリババの傘下に入った「銀泰商業」は昨年5月20日号の「中国企業情報」で取り上げた際、株価は6.3香港ドルでした。今年1月、7ドル台だった株価に対して40%以上のプレミアム付きの10ドルで私有化する案が発表され、取引再開後9.5ドルまで急騰したのです。 

山東羅欣は2005年に香港GEM市場に上場し、これまで4回にわたってメインボードへの上場を申請しましたが、その願いがついに叶えず、上場廃止が選択されました。来週出発の当社視察団で上海にて今回の買付主役の劉執行役員からこれまでの経緯と上場廃止後の同社の方向性についてお話を聞くことにしています。これまで会社訪問または企業説明会など公私ともに同社とお付き合いをしてきましたが、投資家に利益を作ってくれた公開企業として今回は最後かもしれないと思うとやはり寂しい思いをしてなりません。

なお、訪問の様子など、後日改めてお伝えすることにします。

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