過度の悲観論は不要

世界同時株安が続く中、香港は通貨も株も下がっています。何故だったのでしょうか。発端は人民元安と為替の不安定だと考えられます。

スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、中国の李源朝国家副主席が出席し、人民元を意図的に切り下げることはない。為替の変動はマーケットによるもので、またその為替の変動も穏やかなものだと挨拶し、さらに株式市場への政府介入について、「中国の株式市場は未熟であり、政府の市場介入は一部の投機筋が多くの投資家の利益を犠牲にして利得を手に入れることを未然に防ぐためのもので、大多数の投資家の利益を守るよう引き続き努力する」と介入の正当性と監視強化をアピールしました。

昨年8月、株式市場が混乱の中、中央銀と外為取引センターは元の切下げを発表した。2005年7月の切上げ以来、約30%まで元高が続いた為替は、この発表を持って元安に代わり、FRBの利上げ観測と12月の利上げ実施が追打ちに元売りドル買いの動きが加速しました。

日本の場合、円安になると、景気を支える輸出が増え企業業績の改善が期待されるので株高に転じますが、逆の場合、現在のような状況で株価が安くなります。構造転換のプロセスにある中国の企業の競争力は当然日本企業の比ではなく、元安になっても輸出に対するプラスが少なく、上がりすぎた株式市場も調整を余儀なくされています。

今年に入り、元売りが加速し、オンショア市場とオフショア市場の為替に大きな差が生じ、為替差益を狙う投機筋の動きが活発化していました。これを封じ込むため、中央銀はオフショア市場で大規模な元買いを実施する一方、オフショア市場の国内代理銀行に対して、国内銀行と同様の預金準備金を今月25日から課すことにすると発表しました。市中流通の人民元が少なくなり、オフショア市場の人民元オーバーナイト金利は一時60%以上も高騰し、元安を何とか食い止めることができるようになったと見えましたが、しかし、ヘッジファンドの狙いは今度元から香港ドルに向かったのです。

ホットマネーの流入で昨年後半香港ドル売りの介入を21回も実施した香港金融管理局は年明け、香港ドル防衛戦に終始しました。

外国資本の流出(撤退)に合わせる形でヘッジファンドも香港ドルを狙っています。流出(撤退)の原因には、1)FRBの利上げ、2)ファンドマネージャーの年度評価による売却、3)世界同時株安によるろうばい売りなどが考えられますが、売り手口については、まず先物取引市場で香港ドルの売りを立てること、そして株式市場で証拠金取引を利用して香港株を売りにかけること、(株の)売りによって手に入れた香港ドルで為替市場で更に香港ドルを売り、為替を香港ドル安に売りかけること、このような循環で為替安と株安を同時に仕掛けることができたのです。

香港金融管理局は香港の外貨準備高は3500億米ドル以上流通通貨の1.7倍もあり、強制兌換の1米ドル=7.85香港ドルに近付いたら全力で市場介入すると為替を死守することを表明しました。そしてIMFも20日、香港の米ドルペッグ制を支持するとの声明を改めて発表しました。

外資の撤退に伴い、企業買収や出資など香港市場に進出する中国資本の動きが活発になっています。香港上場の会社のPERは史上最低のレベルに落ちています。危機こそチャンスとよく言われますが、危機の真っただ中にいると、いつもの危機とは今回は違うと言う錯覚が生まれます。太陽に背を向けると、目にするのは陰ばかり。明るい方に目を向けると気分も明るくなります。終わりのない危機はこの世にありません。

ちなみに、24日から香港・澳門を訪問し、現地の様子をこの目で確かめて参ります。

 

 

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過度の悲観論は不要」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0PASS:以前から読ませてもらってます!今日はコメントを残しますね。人のブログを読んでいると勉強になりますね。多分、私のブログは相当色濃く、私のキャラクターが出ています。。。良かったら見てね(^_^;)

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