人民元の突然の切下げ発表により、昨日の米国やヨーロッパ株式市場は揃って下落しています。中国むけ輸出の多い企業が自国通貨高で輸出に影響が出ることが懸念されることでとりわけ下げが大きかったのです。
中国人民銀行(中央銀)は昨日(11日)、人民元対米㌦為替レートの仲値(基準値)を2%近くの1136bp切り下げることを発表しました。人民元対米㌦レートの改革で、一日の内、2%近く切り下げることは曾てないことで、切下げの目的についても様々と憶測が出ています。
一般的には、人民元の為替は米㌦とペッグしており、この一年間、主要国及びエマージング市場の通貨対米㌦の為替は大きく切り下げられているのに、人民元は米㌦とペッグして堅調に推移し、輸出企業に打撃を与えています。
この一年間、ロシアルーブルは40%、ブラジルレアルは34%、オーストラリアドルは23%、ユーロと日本円はそれぞれ18%、インドルピーは6%というように米㌦に対して為替を切り下げていますが、人民元はと言えば、わずかに0.2%しか切り下げていない状況で、このことは8月8日税関総署発表した数字からも裏付けられています。
税関総署の発表によりますと、7月の輸出は昨年比で8.3%減少し、また輸入に関しては昨年比で8.1%とマイナス幅も拡大し、貿易黒字は430億3000万米ドルとなっているという。
また国内においても、国家統計局と財新消費者物価指数(PMI)は前月比でダウンし、生産者指数のPPIも下げ幅を拡大しています。
人民元国際化を実現するための第一のステップとして、年内にSDR加入が目され、それまで人民元の切下げはないと投機筋が読み、米㌦を売り、人民元を買う動きも見られています。
輸出の下落を食い止めること、投機筋の目論みをかく乱するためにも、切下げが必要だったのではと考えられます。
では、人民元の切下げが市場にどんな影響を与え、また投資家としてどう対処すべきなのでしょうか。
昨日、中央銀の発表の直後、香港にも上場している航空会社3社が揃って下落しました。器材を米㌦決済で購入したり、または米㌦契約でリースしたりする会社の返済は膨らむだろうという思惑で売られています。
一方、切下げの目的の一つに輸出拡大が期待されていることなのですが、これは国策の「一帯一路」とも合致し、鉄道などインフラや、原子力発電、自動車、風力発電設備、アパレルなど輸出関連企業の株が買われるだろうと推測されます。
しかし、モルガンスタンレーは輸出拡大の目的なら、切り下げ幅はあまりにも小さいともっと幅を拡大すべきだと主張しています。
中国では、2005年7月21日からバスケット制という変動相場制を導入してから対米㌦の為替はすでに30%以上も切り上げられています国内及び海外の消費不振で輸出依存の企業の自助努力だけでは限界に来ていることが税関総署の発表でも明らかになっています。
切下げにより、一時的に外資の資本流出が考えられます。それに伴って株価も一時的に下がる場面が見られますが、切下げが小幅に留まるか、更に大幅な切り下げが敢行されるか注目したいと思います。