改革の新たなステージ

2015年は残り少なくなりました。皆様にとってはどんな一年だったのでしょうか。

アジアを跨ってお仕事をされている会員のN氏から、邱先生の一周忌前後に「アジアで尊敬している人物は3人いる。マレーシアのマハティール元首相と、シンガポールのリー・クアンユー元首相、それに邱永漢先生だ。邱先生がお亡くなりになり、実に寂しいものだ」とファンとしての心情をメールで綴ってくれました。ポジションは違っても激動の時代を生き抜き、国民を貧乏から経済的豊かさまで導いたリーダーシップや啓蒙が共通点として氏に感動を与えられたことでしょう。

N氏の尊敬する人物は歴史的に自ずと評価されることと思いますが、世界に目を向けて歴史に刻まれる人物は少なくありません。その中で最近中国では20世紀の80年代に活躍された世界的リーダーが再評価される動きが出ています。

アメリカのレーガン元大統領とイギリスのサッチャー元首相に、中国の鄧小平の3氏です。

再評価の共通点は、減税や規制緩和、小さな政府、民営化など手法こそ違いますが、困難を極める当の国の経済を立て直したことです。

特にレーガン元大統領の就任演説(81年1月20日)でのフレーズ、「現在の危機においては政府は問題を解決できていない。政府こそが問題なのである」が、役人や識者の共通した問題意識となり、李克強首相は「利益を動かすことは魂を動かすことより難しい」と目に見えない勢力との闘いの難しさを表現しています。

レーガン元大統領のレーガノミックス(Reaganomics)は、民間部門に対する大幅減税と企業に対する行政の関与を無くそうとするのが特徴で、大統領就任まで、アメリカのインフレ率は13.5%、失業率は7.2%に対して、GDPの伸び率はマイナス0.2%という所謂スタグフレーション(stagflation)に陥っていた時期でした。

個人所得税は最高で70%、法人税は最高で46%と企業の活力を削ぐ税率で、日本も負けないくらいの税率があったので、邱先生はその著書で「嫉妬の税率」だと例えたこともありました。

一方、1970年代後半から80年代初頭にかけてのイギリスも同じく高いインフレ率と低成長というスタグフレーションに悩まされましたが、首相に就任したサッチャー氏は労働組合の根強い抵抗を押し切り、電気、水道、通信、航空など国有企業の私有化を断行し、価格統制を撤廃したりするなど構造改革を行った結果、「鉄の女」として英国経済を立て直した経緯があります。

それに対して、鄧小平氏はがんじがらめの計画経済に自由経済を導入し、のちに全面的に市場経済に舵を切ったことで評価されていますが、しかし、高額税率と経済の減速及び「既得利益集団」の抵抗は当時のアメリカとイギリスを超えることがあっても及ばぬところはないことから、レーガノミックス(Reaganomics)やサッチャーイズム(Thatcherism)に倣おうという機運が高まっています。

そしてそれまで経済運営の根拠としたケインズ経済学の根幹を成している、有効需要の原理を見直して、改めて供給側改革(サプライサイド改革)が打ち出されたのです。

 

 

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