株式投資はマラソン 猛ダッシュでは失敗

『徐さんの中国株』11月11日号でオランド仏大統領との朝食会での王健林万達会長のスピーチを取り上げています。その中で、需要と供給の関係について中国の観光地を例に、需要が旺盛だが、供給不足が問題だとして「未開発のハイライトがたくさんある」(供給者側改革)と指摘されました。

今年の流行語大賞にノミネートされた一つに「爆買い」があります。言うまでもありませんが、爆買いの理由として、①中国にはまだない商品、②品質が保証されている商品、③円安または税率が低いため、安く入手できる商品、などが挙げられます。①と②は、考えてみると、いずれも供給者側に原因があって需要不足に起因するものではないことがわかります。

経済成長をけん引してきた輸出、投資、消費の3点セットは世界経済の先行き不透明で輸出が鈍化、また投資(費用)対効果で、自ら投資を自粛している中、期待されるのは自ずと消費となります。国民一人あたりの所得はまだアメリカや日本の五分の一や四分の一程度ですが、「中国経済News & topics」(20151229)でも取り上げているように、2011年から以降年々減少しているものの、最低保証賃金は年間平均15%以上で引上げられています。

供給者側(サプライサイド)改革について2010年から以降、識者により提唱されていますが、今年11月10日、中央財経指導小組(リーダーは習近平)の会合にて初めて経済運営のガイドラインとして習近平により打ち出されました。

では、供給者側改革とはいったいどういうことを行おうとしているのでしょうか。同じく小組副主任の楊偉民は「これまでの供給体系はローエンド・ミドルエンド製品(サービス)の供給過剰で、ハイエンド製品(サービス)の供給不足、伝統産業の生産能力過剰で、構造的有効供給不足が併存していることである。第13次五か年計画では供給体系の改善と完備、構造の改革が必要だ」と解説しています。

その具体策の一つとして、12月4日、李克強首相は「供給過剰解決のため、ゾンビ企業の淘汰を加速する」と発言しています。ゾンビ企業とは、需要が(足り)ないにもかかわらず、生産を続けている企業(鉄鋼や石炭、板ガラス、セメントなど)ことで、中でもほとんどが国有で、上場企業も含め来年は大々的なリストラクチャリングが行われることが予想されます。一方、供給不足とされているのは医療や介護、環境、新エネルギー車、工業4.0、ハイテク、消費サービス(TMT)セクターで、政府の支援策も期待されます。

「既得権益集団」の抵抗はレーガン時代のアメリカ、サッチャー時代のイギリスよりも大きいものと考えます。需要者側視点の改革は即効性があるため、西洋医学と例えられています。一方、供給者側改革は長期間を要し、身体(構造)を整えること(改革)が必要のため、漢方薬に例えられています。当然即効性ではなく、2~3年はかかる(王健林)ものと思われます。

2015年最後のブログとなりました。ご愛読頂き有難うございます。一年を振り返り、株式市場の乱高下もありましたが、中国の供給者側改革の構造と同じく、株式投資もマラソンコースのような持久力が必要で、100mを走る勢いでマラソンを走っては結果が知れたものです。皆様もどうぞ良いお年を迎え、そして2016年は堅実な成果を手に入れるようお祈り申し上げます。

 

<勉強会のお知らせ>

年明け1月14日、都内にて勉強会を行います。2016年の展望を含めてスピーチさせてもらいます。関心のある方はお問い合わせください。

 

 

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