軋轢はあっても流れに変わりはない

トランプ氏の米大統領就任が近づくにつれ、新聞には「米中貿易戦再燃か」と言う見出しが増えるようになってきています。何せ、選挙期間中には、当選したら中国を為替操作国に認定したり、中国製品に対して45%の関税をかけたりすると繰り返し発言し、更に政権中枢の商務長官に対中国強硬派を指名したりするなど、貿易戦が本当に起こるのではないかと懸念する声が出るのも納得しないわけではありません。

昨日(19日)、中国商務省の報道官は記者会見し、1979年両国が国交樹立以来の38年間、双方の貿易は初年度の25億ドルから、昨年(2016年)の5196億ドルまで211倍も増加したことを明らかにしました。両国のサービス貿易はすでに1000億ドル突破し、アメリカがサービス貿易で黒字を維持していること、またお互い相手国に対する双方向の投資も急速に伸び、2016年の投資額は1700億ドルに達していることを明らかにしました。

商務省の報道官は更に、米中貿易全国委員会とOxford Economicsが共同で発表した報告書をもとに、2015年の米中貿易と双方向投資により米国に260万人の雇用を創出し、米経済の成長に国内総生産の1.2%に当たる2160億ドルを産出(貢献)したと指摘しています。

トランプ氏就任式の直前にこれら統計を発表することは、中米は互恵の関係にあり、貿易戦にでも発展すると、両国ともに損害を受けるというメッセージを送りたいと言う思惑が見え隠れているのではないかと憶測されます。

また同じく商務省は今月13日、中国への2016年の金融(銀行、証券、保険)を除く直接投資(FDI)は前年比4.1%増の8132億人民元(約1200億米ドル)に上ったことを明らかにし、年間を通しての新設外資系企業は前年比5%増の2万7900社で、国別では、対中国投資で、2015年と比べて、アメリカが52.6%、EUが41.3%、韓国が23.8%それぞれ増加し、2年連続減少の日本も昨年の対中投資は同1.7%と増加に転じ、主要国の対中投資が増えていることを明らかにしています。

こうした対中投資増には、一つ変化が起きています。サービス業のウエイトが急増したことです。昨年の実行ベースの外資利用8132億ドルの内、約7割に当たる5715億ドルがサービス業だったのです。具体的には、情報、コンサルタント業は59.8%、PC応用サービスは112.8%、総合技術サービスは66.4%、小売業は83.1%、ハイテクサービスは86.1%と対前年比それぞれ大きく伸び、いままで中国を製造拠点とした海外投資は、中国の構造転換に併せて中国本土を消費市場とする投資が増えてきていることに大きな特徴があります。

トランプ氏就任後には、鉄鋼など一部分野では、ダンピングなど訴訟合戦が起こる可能性はありますが、全面的貿易戦に突入すると、お互いの利益を損なうことになることを双方ともに理解していることだろうと考えます。

 

 

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