不動産の金融化がバブルの始まり

中国商業不動産最大手の万達(WANDA)グループの総帥、王健林氏は先月28日、CNNの取材を受け、中国不動産市場の現状について「中国の不動産市場は史上最大のバブル期に入った」とした上で、「解決策は全く見当たらない。政府は購入制限や融資に条件付きなど様々な措置を取っているが、効果が全く見られていない」との見解を示しました。

 

王氏見解の通り、9月30日国慶節の長い連休を控え、北京市政府は、自家用初めての住宅を購入の際、頭金は物件代金の35%以上、基準値(140㎡)以上の住宅の場合、頭金を40%以上用意しなければならないとの融資規定を発表しました。また投資用住宅を購入の際、頭金はそれぞれ50%と70%をと決め、全国でも一番厳しい融資条件となることで話題を呼んでいます。

 

そもそも中国の不動産市場には、バブルが一体あるのかどうか、不動産価格は今後も上がり続けるのか、見方の分かれるところですが、最近は1990年代の日本のバブル時代と比較する論点が増えてきています。中でも、不動産価格、融資及び(利回りなどの)不均衡などは1980年代末期の日本とそっくりだという論点が主流となっています。

 

では、バブルかどうかの見分けはどこにあるのでしょうか。不動産価値のGDP比を使われることがありますが、1990年代の日本の不動産の価値は当時のGDP比で約200%、サブプライムローンの問題が発生したアメリカでは、2006年の不動産の価値はGDP比で170%だったのに対して、中国の現在の不動産の価値はGDP比でなんと250%に達し、北京、上海、深センの3都市だけの不動産の価格はすでに全米不動産の約70%に達していると言います。

これには、土地の使用年数は70年(借地権)つきという要素を考えると、地価も含めた場合のGDP比はもっと高くなるだろうと推測されます。

 

「東京の土地を売ったら全米の土地が買える」まだ余韻のある声がその内「北京の土地を売ったらニューヨークを三つも買える」そのような話が聞こえてくるような気がしてなりません。

 

不動産高騰の理由について、M2など流動性過剰や可処分所得の増加、人口構成、土地の供給など様々な側面からの分析が出ていますが、不動産の金融的属性についてここに来てやっと議論が出ています。

 

北京の不動産価格の推移について、こんな「都市伝説」があります。某青年が1980年代、一旗揚げようと、北京市内にある四合院(庭付き住宅)を凡そ30万(約465万円)元で売却してヨーロッパ留学に出向いたと言います。

イタリアに辿りついた青年はボロアパートに身を寄せて昼は語学、夜はハシゴで仕事をし、何回も強盗に会い身ぐるみ剥がされてもいたが、30年近く頑張って目標の100万ユーロ(約1億1500万円)を貯めて悠々自適老後を過ごそうと北京に帰ったのですが、30年ほど前に売却した自宅を見に行こうと、周辺の仲介業者屋さんに入ってみたら、かつての自宅は現在8000万元(約12億4000万円)で売りに出されていることを目撃し唖然としたと言います。

 

2000年に200万元(約3100万円)で高級外車を買っても15年経ったら鉄くずになるだけで、不動産に投資したら1000万元(約1億5500万円)になっただろうと不動産神話はこのように浸透しています。

 

映画「The Big Short」の中に、色紙に書かれた漢字2文字が出た場面がありました。「慾」と「恐」です。株式投資にも通じるこの2文字ですが、不動産投資をする人には「恐」という文字がないようです。

 

 

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