債務の株式化始動 中国版GPIF幕開けも

不動産抑制の緊急対策が連休中に18もの都市により発表され、その効果も契約の成約件数にすぐに表れました。一部では緊急対策以前の10分の1まで落ち込み、当局にとって膨らむ一方の債務の問題は引くに引けない危険水域に来ていることが伺えます。

 

緊急対策は不動産価格の抑制よりも不動産バブルをこれ以上放置できないための措置であることについて先日触れましたが、しかし株式市場では、不動産企業の株価が連休明け一斉に下落に転じています。

 

市場では、不動産規制を打ち出すと、投資のホットマネーは不動産から株式市場に回ってくるのではと不動産と株式市場は交代で上がったり下がったりするとの見方も出ていますが、不動産は周期の長い投資である上、上海、深セン上場企業凡そ2900社の内、不動産専門の会社のほか、「副業」として不動産投資をしている会社も併せると、1500社にもおよび、規制の懸念でこれら企業の株価も連れ安となっています。

 

先日、中国版CDSの導入について触れましたが、今度は「市場化した銀行債権の株式化に関する指導意見(ガイドライン)」が10日、国務院により発表されました。9月22日の国務院議決としての同ガイドラインはこの時期に及んでの発表には、個人も企業も債務の規模(レバレッジ率)は無視できないところまで膨れ上がったことの裏付けではないかと思われます。

 

11日付当社HP「中国経済News & topics」では、中国「東北特殊鋼」破産申請のニュースを取り上げました。デフォルトは数十億単位とされていますが、氷山の一角ではないかと考えられます。

 

今回のガイドラインは「ネガティブリスト」として、次の4種類の企業にして債務の株式化を明確に禁止しています。これ以上生存が望めない「ゾンビ企業」、制度を悪用し、故意に債務から逃れようとする企業、債権債務関係が複雑で明確に整理できない企業、生産過剰と在庫をさらに増やす企業、の4種類です。

 

更に、銀行は政府特例を除き直接債務を株式化してはならず、資産管理会社など実施機関を介在しなければならないと規定されているほか、政府は直接関与せず市場に任せるとして、債務の株式化の際、公開市場の取引価格を参考に、国有企業の転換価格を決めること、転換企業と実施機構間の不正な利益操作を防ぎ、如何なる株主、とりわけ大株主がこの際企業資産を私物化することを厳しく取り締まるとしています。

 

1990年代、国有企業救済の一環として経営者による企業買収(MBO)が認められ、優秀な企業家を誕生させた一方、二束三文で企業を買収し、その後上場させて企業ごと売却した事例はたくさん出ています。それに対する反省とも取れる措置が今回講じられています。

 

ガイドラインに対して、市場では、多額な不良債権が危惧される銀行や不良債権処理を専門とする資産管理会社にとってプラスに動くだろうと見られます。

 

債務の株式化もCDSもデフォルトの発生を伸ばすことはできても企業業績を保証するものではありません。業績の伴わない企業はいずれ淘汰されます。

 

34カ条からなるガイドラインの第23条に保険資金や年金、養老保険など長期的資金の株式投資を奨励し、貯蓄を秩序良く株式投資に誘導するとあります。中国版GPIFも間もなく幕を開けます。

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