直通車承認 ねらい目は?

市場待望の深セン・香港ストックコネクト(深港通)がついに発表されました。昨日午後4時半ごろ、新華社通信など現地メディアは国務院(内閣府)ポータルサイトの情報として、当日の国務院常務会議で、深港通の実施案が採択されたと速報で伝え、続いて中国と香港の証券監督(監視)当局が同じ日に北京で共同コミュニケを発表し、深セン証券取引所と香港聯合取引所、内陸と香港の決済機関がストックコネクト――深港通システム(直通車)の開設を批准し、相互取引準備の開始を宣言したと報じました。

さらに、上記宣言を受けて、夜9時(日本時間の同夜10時)香港証券取引所の周主席(会長)と李総裁(社長)がそろって記者会見に臨み、市場が関心を持つ質問に答えました。関係者総動員の「騒ぎ」となった背景には、もともと投資家が関心を持っていること、また2015年1月李克強首相が上海・香港直通車の後に、深セン、香港もあるべきだと発言して1年8か月も経ったこと、今年のMSCIのA株指数採用が見送られ、G20の中国(杭州)開催も来月に控え、より一層の資本市場開放をアピールする必要に迫られていることが言えます。さらに今年3月の全人代政府活動報告で年内開通を李首相により宣言され、関係者も事あることに「開通準備中」や「開通間近」などと発言し、投資家にとって「直通車」はオオカミ少年になったじれったさが見え隠れていることも取引所のトップが深夜にもかかわらず自ら説明に出なければならない理由があったと推測されます。

さて、上海、香港直通車の開通が2014年11月のこと。それから上海も香港も短い期間でしたが、凡そ7年ぶりの大相場を迎えました。深セン、香港の開通で同様の大相場が期待できるのでしょうか。共同コミュニケと記者会見の内容から海外投資家にとっての注意点を拾ってみました。

投資ターゲット開通したからと言ってすべての銘柄に投資できるわけではありません。深セン市場の投資可能銘柄は時価総額60億元以上の各指数銘柄とAH同時上場銘柄。対象は880銘柄。香港市場は時価総額50億元以上の指数銘柄とAH同時上場の銘柄で、対象は全417銘柄となります。ここで重要なのは時価総額で線引きされていること。先週、医薬品銘柄の0587が突然取引停止になりました。原因を教えてほしいというご依頼を複数寄せられています。昨日付けの「京華メルマガ」でこれを取り上げましたが、時価総額の小さい銘柄は空売り機構のターゲットになりやすいことを肝に銘じたいものです。

価格差株AH同時上場銘柄が直通車の対象銘柄になっています。上海、香港の同時上場は80社を超えますが、深セン、香港市場の同時上場は17銘柄しかありません。直通車の開通期待で価格差株が狙われています。

限度額投資限度額について、上海、香港直通車同様の一日当たり130億元(上海市場)と105億香港ドル(香港市場)となりますが、総限度額の制限が今回撤廃されています。一日の限度額を温存させた理由について、香港証取の李総裁は市場が過熱になった場合、ブレーキをかけるためだと率直に認めています。

このほか個人投資家の参加資格について、「上海、香港」と同様口座残高は50万(約760万円)以上と制限されています。なお、肝心な開通の時期について、共同コミュニケ発表の後、4か月の準備期間とされていますが、11月末から12月にかけての期間ではないかと憶測されます。

資本市場の開放は国際公約になっています。人民元も10月1日からSDR構成通貨になり、SDR建て債券の発行も決まっています。株式市場の開放は資本市場開放の一部に過ぎませんが、相互の市場に資金の流入が確実なことです。短期的にも長期的にもプラスになることは間違いありません。ぜひこのチャンスを活かしたいものです。

 

 

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