違う論理で動くA株とH株

昨日(5日)の中国株式市場は、同じ政策の発表で上海と香港では全く違うパフォーマンスを見せました。

政府が進めようとするデット・エクイティ・スワップ(DES)――債務の株式化の第一陣は1兆元規模で3年またはもっと短い期間で銀行の潜在的不良債権を解消することが目的だと報じられました。

具体的実施方法はこの4月にでも発表されるということで、A株では、市場に1兆元(約17兆円)が流入することで、現在債務が高く、株価が低い国有企業が狙いだと上海総合指数は1.45%高まで買われ、1月13日以来の高値となって、上海、深センの出来高は合計7130億元の大商いとなったのです。

一方、約7割が同時上場または持合いをしている香港市場では冷ややかでした。1兆元規模も不良債権を株式に転換させなければならないほど、経済は悪化しているのかという雰囲気が濃厚で、寄付きから売られ、ハンセン指数の終値では1.57%下落し、出来高は700億香港㌦と平均程度に留まっています。

上海市場の上昇には、国有資本(持ち株)の社会保障基金充当案が間もなく発表されること、PMI(製造業購買担当者指数)が昨年8月以来、好不況の境目となる50を上回ったこと、格付け機関のムーディズとS&Pが中国国債の格付けを引き下げたことに対して、新華社通信などは、中国経済は回復の途中にあるとの社説の発表が伝えられたことも一因ですが、上海と香港市場では、同じ政策に対してこれだけ読みが違うものだと考えさせられてしまいます。

3月30日、香港上場の万達商業(3699)は公告を発表し、ホールディングスの大連万達集団はH株の万達商業を私有化(上場廃止)させる可能性があることを明らかにしました。

2014年12月鳴り物入りで上場した万達商業はなぜこの時期に私有化の方向に向かおうとしているのでしょうか。その理由の一つに、上場15カ月で、いまだPERは5倍程度、PBRは1倍未満の評価で、同社本来の価値を全く反映されていないことへの不満があるとされます。同社はH株の上場を廃止にし、A株に回帰して上場するだろうと憶測されます。

これは万達商業に限らず、香港に上場している内陸の会社の共通した認識と言っても過言ではありません。

香港市場の上場企業は数こそ2000社ほどありますが、中国系資本の会社とHSBCや証券取引所及び財閥企業数社のほか、香港本土企業の時価総額は市場全体の5%にも及ばず、内陸の上場企業の時価総額が絶対的な割合になり、投資家も海外機関投資家と地元財閥系及び内陸投資家(機関及び個人)三者鼎立となっています。

海外機関投資家や地元財閥系は本土企業に対して常に冷静に見ておりこれを低く評価する傾向にあります。これが万達商業はじめ、本土系上場企業私有化の動機づけとなり、今後の動きも注目すべきだと考えます。

しかし、香港証券取引所が3月7日発表した「現物市場取引研究レポート2014/2015」によると、内陸投資家の香港市場に占める(取引高の)割合は2013/2014年度の5%から現在の9%まで倍近く上昇したと言います。

また上海、香港直接取引の香港市場への資金流入(買い)は2015年10月27日以来、103営業日続いていることが統計で明らかになっています。中国系資本が増えてくると、香港市場も大きく動き出すだろうと見ています。投資家としてその日に備えたいと考えます。

 

 

<お知らせ>

4月7日(木)の勉強会は定員で締切となりました。4月10日(日)四環医薬との昼食会はまだ空席があります。関心のある方はお問い合わせください。

 

 

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