中国版CDS登場 不動産はどうなる

今年の3月、当社視察団でインドを訪問した。利用したのはエアインディアで成田―デリー間は凡そ9時間のロングフライトでした。

機内ではめったに見ないものですが、この際はエンターテインメントでも楽しもうと、映画リストをチェックしたらアメリカの新作(2015年)、「The Big Short」(邦訳:マネー・ショート華麗なる大逆転)があるのではありませんか。出発までに、四分の一程度しか見られなかったもので、ちょうど長いフライトでしたので全編見たのです。

 

なぜこの映画に興味を持ったかと言いますと、金融危機の発端となったサブプライムローンからリーマンショックまでのプロセスを刻銘に描き、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などデリバティブ商品の仕組みや運用(儲け方)をエンターテインメントという形で説明していたからです。何より中国の株式市場や不動産市場に警鐘となるものはないかとその鏡を見出そうとしたのです。

 

それから半年、9月23日に中国銀行間市場交易商(ブローカー)協会(NAFMII)は「銀行間市場信用リスク緩和措置テスト業務規則」など四つのデリバティブ取引に関するガイドラインを発表しました。

中国版CDSと言われるデリバティブ取引に関するガイドラインの発表は債券の元利払い延滞を一層容認するものと見られ、企業の債務不履行が今後多発するだろうと見られる中、銀行間でリスクの管理と分散に向けた効果的なヘッジ手段が求められています。

 

このタイミングの発表はすぐに大きな反響を引き起こしています。なぜなら、一部短絡的解説では、CDSはアメリカ不動産バブル、ひいては金融危機を引き起こした元凶だと喧伝され、加熱した不動産市場を冷やしたい趣旨があるのはと様々な憶測が出回っています。

 

というのも、8月には上海で不動産購入制限の新しい政策がまもなく発表されるという噂が出てその前に契約し登記を済ませようとする人が登記所に殺到する騒ぎが起きたのです。

続いて、G20 が行われた杭州でも、今月購入制限と融資制限の政策が発表され、多くの市民が夜通しで契約に走っています。

 

そして今週南京でも同様な政策が発表され、購入の資格を手に入れようと、妊婦さんはじめ、70歳以上のじいちゃんやばあちゃんも役所に離婚届けを駆け込みで提出し、1ファミリー1住宅という枠を突破しようと、最終の賭けに打って出たのです。

 

誰がどう見ても過熱な市場になっていますが、ブレーキがかからないのは何故なのか、先日、北京放送時代編集長を務めた元同僚が来日し、その質問をぶつけたら、「家族全体で無理してでも500万元(約7750万円)を集め、登記を済まして2、3ヶ月で600万元(約9300万円)で売れるから、その100万元で子供の教育資金を確保できるから」だと市民の切実な声があることを教えてくれました。

 

CDSは債券投資家のリスクヘッジの手段として広く利用されていますが、不動産で例えるなら、その価格がずっと上昇することが前提となります。しかし、不動産を500万元で買って600万元で売れるのには、それをさらに買ってくれる買い手がいることが前提ですが、ババ抜き同然の空前の不動産ブームはCDSなどデリバティブ商品と同じく、最終保証をしてくれる人は一体誰なのでしょうか。

 

<視察団のお知らせ>

 

第18回投資視察団は11月20日から26日までの6泊7日で行います。

大連、瀋陽、天津、北京の4都市を訪問します。不動産バブルと言われて久しいですが、現場を見てみたい方もどうぞご一緒ください。

 

企業訪問の合間に、租界地など縁の地も訪ねます。初めての方もご参加いただけますので、関心のある方はお問い合わせください。

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