市場介入か投資か――国家資本の流れは

中国市場は清明節で本日はお休みです。最近中国の株式市場で、「梧桐樹」(「プラタナス」の中国語名)投資有限公司の名前がにわか注目されるようになっています。

昨夜(3日)A株H株共に上場している農業銀行は2015年の本決算を発表しました。大株主名簿の上位10位に「梧桐樹」の名前が歴然と並べられています。これで、上場商業銀行の内、建設銀行以外、農業銀行(0.3%)、工商銀行(0.4%)、中国銀行(0.36%)、交通銀行(1.07%)の大株主にも「梧桐樹」の名前が登場するようになりました(括弧内は持ち株比率)。

上記4行の2015年第3四半期の決算報告には、「梧桐樹」の名前が一切登場しなかったので、第4四半期にこれら銀行に投資し始めたものと考えられます。

では、突如現れた「梧桐樹」とは、一体どんな会社なのでしょうか。

「梧桐樹」の全称は「梧桐樹投資平台(プラットホーム)有限責任公司」と言います。2014年11月5日に設立されたもので、資本金1億元の国家外為管理局の100%子会社です。

中国株が大暴落した後、市場が安定に向かった第4四半期のわずか3ヶ月の間、4大商業銀行に合計252億元も投資したことになります。

2014年11月と言えば、北京APECが開かれ、中国政府がAIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路、シルクロード基金を打ち出された時期で、同年12月シルクロード基金に、「梧桐樹」からは65億米ドルを出資して最大の株主となったのです。

そしてその後、外為管理局は外為準備委託融資のデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)という形式で、国家開発銀行、輸出入銀行にそれぞれ480米ドルと450億米ドルを出資していますが、出資の執行機関としてはまさにこの「梧桐樹」だったのです。つまり、「梧桐樹」は設立当初から国家的役目を背負わされていると言うことになります。

「梧桐樹」の商業銀行への投資は、昨年市場介入を実施したナショナルチームと言われた中国証券金融公司と中央匯金公司からの売却の時期とほぼ重なることから、この2社の売却の受け皿として引き継いだのではと推測されます。

「梧桐樹」の投資には一石三鳥の役割があったと市場で見ています。一つ目は、構造転換で、国内企業の海外進出をシルクロード基金などを通してサポートすること、二つ目には、3兆2億米ドルの外貨準備の運用を分散し、米国債のみならず、投資先多元化でリスクを分散すること、三つ目には、中国の株式市場、とりわけ銀行や証券系など金融機関などは底値を迎え、これら金融株は指数構成銘柄で市場を買い支えると言う意味もあって第4四半期に買いを入れたと言うことです。

社会保障基金の株式市場への参入は日本と同様様々な制限があります。また銀行も企業への直接投資は「商業銀行法」により規制されています。国家的意思を代表できるのは、こうした国家資本による投資プラットホームです。その資金の流れ次第では、株式市場の動向もある程度読み取ることができますが、しかしそれが判明できるのは4半期ごとの決算報告です。それでも市場の流れを読み取るのには参考になるのではないかと考えます。

 

<勉強会のお知らせ>

4月7日(木)、都内にて勉強会を行います。中国経済や中国株式市場の最新情報をお伝えします。関心のある方はお問い合わせください。

 

 

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