中国株 泣き笑いの2021年(2021年12月30日付、全文公開)

 中国AI最大手の商湯科技(センスタイム・0020)は予定通り、12月30日香港市場に上場しました。2021年の中国株関連でもっとも注目されるべき銘柄と言えば、同社と6月30日にNY市場に上場した滴滴出行(DIDI)ではないでしょうか。
 DIDIは30日、第2(4月1日~6月30日)と第3(7月1日~9月30日)四半期決算速報を発表しました。第2四半期の売上高は前年同期の311億6700万元より54.69%増の482億1200万元で高成長を維持しましたが、上場してからの第3四半期になると、前年同期比1.67%、前の期より11.48%減の426億7500万元とダウンし、純利益に至っては、Non−GAAPベースで2Qは23億600万元の赤字、3Qでは、306億元まで赤字が拡大しています。同社は6月30日に上場し、二日後にはデータセキュリティ―問題で官庁の調査が入り、さらに四日後に同社アプリの新規ユーザー登録が一時ストップと命じられたのです。一連の取り締まりの結果が3Qの決算に如実に表れたと言えます。官庁による調査の結果、同社は12月3日、上場してわずか156日で上場廃止を宣言せざるを得なかったのです。
 DIDIの上場廃止は完全に中国政府の意向が反映されたものと思われます。
 政府の意向があると言えば、センスタイムの上場延期を巡っては米政府の働きかけが効いたと言えます。
 センスタイムは19年10月米商務省より、そして今月10日に今度は米財務省より高度技術の輸出禁止と米投資家の投資禁止対象にそれぞれ指定されています。米の制裁はセンスタイムに限ったことはではありません。来年にかけてより多くの中国概念株が米の圧力で香港か内陸市場に「舞い戻って」来ると思われます。
 さらに、上記両社には共通点が一つ見られます。ソフトバンクが両社の大株主を務めていることです。DIDI上場後、株価は18ドルまで一瞬高騰した後、ずるずると下がり、29日の終値は4.94ドルと半年で高値から72%急落。一方のセンスタイムは上場当日最高で約23%高騰し、同社実力に対する期待で買われています。投資会社化したソフトバンクも中国株で泣き笑いの1年だったと言えます。
 泣き笑いと言えば、今年は上場を計画しながら、アリババと美団に対する独禁法違反による巨額罰金や学習塾、ゲーム、不動産などの業界に対する取り締まりを見て上場を見送った世界最大のユニコーン企業があります。TikTok(ティックトック)(国内向けでは、「抖音 (ドウイン)」という)を運営する「字節跳動(バイトダンス)」です。
 中国長者番付の胡潤研究院が纏めた「胡潤U40(40歳以下)若手企業家ランキング2021」によると、バイトダンスの時価総額は2兆2500億元で、2位のアントグループの1兆元より2倍以上も多く、世界最大と言われる所以で、今年はGoogleを抑えてダウンロード数世界1位のアプリだったと言います。ちなみに同社大株主名簿にもソフトバンクの名前が並べられています。上場を見送ったお陰で、「時価総額」ではなく、評価額が2兆2500億元とあまり下がらず、世界一位を死守し、多くのテック企業の株価が暴落する中で数少ない笑える企業となったのです。
 今年の中国株は内憂(政府の監視強化)外患(米の取り締まり)続きの相場だったのですが、来年も恒大集団(3333)経営危機の影響と独禁法調査、個人情報保護という名目の監視がしばらく続くものと考えられます。テンセントが京東を手放すと発表したら、アリババも12月セカンド上場したばかりの微博(ウェイボー・9898)の持ち株約30%の売却を模索していると伝えられています。大手の自己防衛は既に始まってますが、センスタイムやバイトダンスなどのユニコーン企業も次々と誕生してくるだろうと思われます。
 「徐さんの中国株」では内憂外患のリスクに留意しながら、引き続きそうした有力企業を発掘して参ります。引き続き宜しくお願いします。
 皆さんも良いお年をお迎えください。

 

 

 

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