私有化 大株主のわがままか

5月31日付の「京華メルマガ」にて万達商業(3699)の私有化案を取り上げました。万達商業は1年半前の2014年12月鳴り物入りで香港に上場したのですが、わずか15ヶ月目の今年3月30日に、上場廃止を目的とする公開買付を行う公告を発表しました。

上場を目指す目論見書から証券取引所の鐘を鳴らすまでも長い期間を要したものですが、上場を果たして1年ちょっとで、上場廃止とは。企業の長期戦略は一体どこへ行ったのでしょうか。公開買付けをして企業を再度私有化することは万達商業が初めてのケースではありません。2012年上場5年目のアリババは、IPO時の株価(13.5香港ドル)で発行済み株式を公開買付で全数買い戻して香港での上場を廃止にしました。発表の前日9ドル台の株価は42%も高騰しましたが、2007年の上場後最高で40.5香港ドルまで高騰したこともあって、塩漬けで損していた投資家も意外と多かったのではないかと推測されます。

また昨年、10月20日、小売りの物美商業(1025)は公開買付を発表してわずか2か月半後の今年の1月7日、上場廃止が決定となりました。同社は、取引停止前の株価3.27香港ドルに対して、90%高の6.22香港ドルのオファーを出してスムーズに私有化を完了したのです。

公開買付は、昨年から今年にかけて米国上場の中国概念株に頻繁に起きています。2015年6月、ネットセキュリティソフトの「奇虎360」(QIHU)が私有化案を発表してから、前後して20数社が現在A株への「回帰」を目指して公開買付の準備を進めています。

公開買付の背景には、次の三つの要因があると指摘されます。株価が長期低迷し、特に香港市場において会社の本来の価値が全く反映されていないと経営陣や大株主に認められたこと、株価が長期にわたって(企業価値と)かい離し、企業の再融資を難しくし、私有化したら融資が受けやすくなると判断されていること、事業再編を上場企業の複雑な手順を踏むことなく私有化を通してスムーズに進行させることができること、もちろん、私有化した場合、SECの規則に従い、情報開示を義務付けられることもなく、法律や会計監査のための支出を抑えることもできるし、株価の値動きにいちいち気を使うこともなくなることが動機づけとなっています。

つまり公開企業から私企業に逆戻りすることになるということです。公開買付が発表されると、その株を買う動きが活発化し、株価が高騰するケースが多く見受けられます。万達商業の場合、買付発表前日の株価は38ドル台だったのですが、翌日18%高の45ドル台まで買われています。そして5月30日、IPO時の株価48香港ドルに対して10%のプレミアムを付けて買い戻す案が発表されると、これまた1%高まで買われています。

公開買付の案は既存株主の75%の賛成と10%を超える反対がないことが義務付けられています。事業再編などのための公開買付と、私有化案だけ発表し、株価を釣り上げてキャピタルゲインをゲットして売り逃げる経営者(大株主)がいることもまた事実です。事業再編のための公開買付か、わがままな株価つり上げ策か見極める必要があります。

 

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