CIPS運用開始

今月の初め頃、二つのニュースが日本をはじめ世界でも大きく取り上げられました。TPPの大筋合意とノーベル賞の発表です。日本人科学者の連続受賞で応用や基礎研究においての日本の底力を再度世界に示したのです。一方自然科学において中国人研究者が医学生理学賞初受賞したこともあって漢方も世界に認められるきっかけになるのではと当社HPでも取り上げました。 

TPPの大筋合意について一部評論家からは中国包囲網だと捉えられるコメントも見えますが、TPPが求める関税ゼロよりも、金融やサービス業の開放、国有企業の民営化、環境、知的財産の保護など、翻って見たらどれもこれも中国が現在進めようとしている改革なのではないでしょうか。そのような意味でTPPはむしろ中国の改革を外部から更にプレッシャーをかけているものと捉えるべきだと考えます。 

一方、TPPなどのニュースに捉えられるあまり、マスコミが見落としてしまうビックニュースがありました。中国のCIPS運用開始のニュースです。 

CIPSはCross-border Interbank Payment Systemの略で、人民元クロスボーダー決済システム、人民元建て貿易決済と人民元取引(投資)をスピーディに進めるための金融インフラのことです今月8日、上海で正式に始動したのです。 

そもそもこのCIPSは何にどうやって使われるものでしょうか。海外送金の経験者は「SWIFTコード」という言葉を聞いたことがあると思います。国際銀行間金融通信協会が各国の金融機関に付与するコードで金融機関を識別する国際送金システムのことです。 

これは米国主導のシステムでどこにいくらくらい送金したかは瞬時に把握できるシステムで国際間送金の主流というより、これに代わるシステムがなかった(米国内ではABAコードがある)ので、主要な送金ルートだったわけですが、これとは別にCIPSができたと言うものです。 

CIPSを使うとこれまでSWIFT経由の送金がそのまま人民元で直接決済できるようになり、米㌦介在の手数料も必要とせず、スピーディに決済ができる、「決済の高速道路」(専門家)ができたなどと期待されています。 

CIPSを主導した人民銀行によると、運用は1期と2期に分かれ、1期目は貿易決済、2期目は投資(人民元取引)の決済などを予定し、すでに国内の主要銀行11行のほか、HSBCやシティバンク、スタンダードチャータード、DBS、ドイツ銀行など9社の外資系銀行の中国法人が参加を表明しています。 

人民元の国際化は元の自由兌換がクローズアップされがちですが、国際通貨としての自由兌換と元取引のインフラ整備が着実に進められ、国際化に向けて大きな一歩を踏み出したと言えます。このことはある意味においてTPPよりも中国にとって意義がより大きいだろうと考えます。

 

 

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CIPS運用開始」への1件のフィードバック

  1. SECRET: 0PASS:これは中国共産党の人民元への介入を難しくさせる。まあこれまでも介入しても期待される効果は余りなかったけど。

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