企業再編が加速 投資のチャンスは

中国がWTOに加盟して今年12月で丸15年を迎えます。加盟の際、中国はダンピング(不当廉売)の是非が輸出製品の公定価格や国家管理価格ではなく、補助金を除いた価格で判断されるなどという条件を受け入れて加盟が実現されました。こうした合意条項は、加盟から15年後となる今年12月11日に失効することになっています。米通商代表部(USTR)の代表は14日WTOの会合で同条項が失効するからといって、中国が自動的に「市場経済国」に認定されるとは限らないとの考えを中国側に伝えました(14日付ロイター通信により)。その前日、USTRは中国から他国に輸出する原材料に中国政府が関税をかけているのは不当だとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表しました。

WTOの加盟と加盟後の15年間、米中の駆け引きは止まりませんでした。中国の中では、上記条項の失効に伴い、自動的に「市場経済国」になるとの認識が一部にあるので、USTRの代表はそうした考えにくぎを刺したと言えます。「市場経済」認定(努力)の一部として、中国では今年国有企業の再編を強力に推進しています。国有資産の管理監督と整理統合を進めるため、2003年国有資産管理監督委員会が設立されました。当時196社ある国有大型企業を7年後の2010年に123社まで統廃合して再編されました。統廃合に際して業界のトップ3に入る企業を存続させ、企業数を減らすことを優先した結果、消化不良で事業がうまく行かないケースが頻出しています。

負け組統廃合の例に、中国冶金と中国鉄鋼で、両社の負債比率は、前者が85.5%、後者が90%で、両社が一緒になっても負債を減らす目途は立たないのが一般的な見方です。また海運、物流の中外運と揚子江を中心とした造船と輸送の長江航運の合併も期待されていたが、事業が大きくかけ離れていることもあって図体こそ大きくなりましたが、利益を出せる企業まで育っていないのが現状です。

そうした中で、今月11日、前出国有資産監督管理委員会は中国国際旅行社(601888)を香港の中国旅行社と併合し子会社化することを発表しました。香港中国旅行集団は、香港で旅行社やホテル、テーマパーク、不動産、金融、物流、資産管理などを手掛ける国有企業の一つで、傘下には上場企業の香港中旅(0308)があります。一方、中国国際旅行社はツーリストと免税店経営の中国随一の旅行社で、両社の合併で中国一の旅行会社が誕生することで、香港中旅の株は連日買われています。

またこの原稿を綴っている時に、同じく国有の中国糧油集団と中国紡績集団の合併が発表されました。中国糧油集団の傘下には、中国食品(0506)、中糧控股(0606)、蒙牛(2319)などH株、A株に上場する会社、合計9社を抱えるマンモスグループで、この合併で傘下企業にどのような影響を与えるか注目してみたいと思います。イギリスに二人目の女性首相が誕生したことで世の中の注目を集めていますが、初代女性首相のサッチャー氏が1980年代に進められた国有企業の民営化が最近中国でも頻繁に取り上げられています。国有企業の吸収合併や再編は難問山積ですが、株式市場にはそれによるチャンスもあることを頭の片隅に入れてほしいと思います。

 

 

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