国有企業の改革が焦点ーー破産 踏み切れるか

先週のG20で参加国が自国通貨の切下げ競争回避に努めることと構造改革など「全ての政策手段」を動員する方針を盛り込んだ共同声明を発表して閉幕しました。

G20に出席したルー米財務長官はその後北京に飛び、大統領特別代表として李克強首相と会談し、人民元為替レートや構造改革に関して中国政府が示した前向きな姿勢は世界にも自信を与えたとおだて上げたと言います。

ユーロや円が米ドルに対してここ一年10%以上も切下げとなり、人民元も切下げとなると、米国の輸出引いては好転に向かおうとした米国経済に水を差す恐れもあり、現役財務長官として何としてでもこれを阻止したいところでしょうから様々な場面で為替の問題を取り上げていました。

その中国がG20閉幕二日後の29日、突如として銀行の預金準備率の引下げを発表したのです。G20という国際舞台で約束した以上、為替レートの切下げはすぐにできませんが、しかし預金準備率は約束には入っていない「内政」であって中央銀行の裁量でできる政策なのです。

米の利上げに資本が米国に還流し、国内でも人民元を売って米ドルを買う動きが加速し、人民元が更に安くなって資本が更に流出するという循環で、市場に流動性不足が起きています。昨年10月以来4か月振りの準備率の引下げがこうした背景があるだろうと見られます。

と、そこに更に発表されたのが、2月の中国製造業購買担当者指数、PMIなのです。好不況の境目とされる50を7か月連続で下回り、2011年11月以来の低水準(49)で、春節と言う季節的要因があるとは言え経済の減速が依然厳しい状況にあることが内外に示されています。

構造改革の目玉に昨年から「混合所有制」が打ち出され、「概念株」として国有企業の再編が注目されていました。しかしG20に出席したポールソン米前財務長官は、これを一刀両断します。

氏は、CNBCのインタビューで長期でも、中期でもまたは短期でも中国は厳しい挑戦を待ち受けているとして、「短期的には、為替や生産過剰及び市場の信頼回復、中期的には債務と高いレバレッジの難題解決、長期的には新たな、持続可能な成長ポイントを見つけることだ。これら構造的調整は習体制が進める改革プログラムの核心である」と語り、さらに「鉄鋼や石炭、その他業界の生産過剰を片付けるプロセスでとりわけ効率の悪い国有企業と立ち向かう際、失敗した企業の破産を認めなければならない。これを以て生産過剰対処の決意を示さなければならない」と中国経済の問題点を指摘します。

2008年の米国発金融危機の際、財務長官を務めたポールソン氏ですが、リーマン・ブラザーズを破産させたものの、出身母体のゴールドマン・サックスを「再生」させたことでも有名です。中国が導入しようとする混合所有制について、氏は「マーケットではその進展について確信が持てない状況だ。国有企業の改革は既得者集団からのプレッシャーを受けている」と混合所有制の難しさを指摘しました。

米国の現役財務長官は為替の動向に関心を示し、また前財務長官は現在基金理事長の立場で中国経済について診断を下しています。株式市場で注目されているだけでなく構造転換の成否ともかかわる国有企業の改革、今年の注目の最大のテーマと言えるでしょう。

 

 

徐さんの中国株の最新記事