迷ったら「徐さんの中国株を」(2020年12月30日付、全文公開)

 年の瀬を迎え、皆様の投資実績は如何なものだったのでしょうか。
 今年は貿易戦からスタートした米中の対立が感染症の流行に及んで全面的対決に発展し、落ち込んだ経済を立て直すため各中央銀行が流動性を増やし、株式市場が活気を呈している中、米大統領選の混沌さと年末に際して中国の監督官庁が世界最大規模とされるアントグループのIPOに待ったをかけ、さらにアリババグループに対して立件調査を行うなど、投資家にとっても波乱に満ちた1年だったのではと考えます。
 先日久しぶりにブックオフ(BOOKOFF)に立ち寄り、投資本コーナーを覗いたのですが、中国株の本は一冊も見当たらなかったことに思わず頷いたのです。中古本で店舗により差は大きいでしょうが、かつて10数種類以上は並べられた本が完全に消え、関心が薄くなったことの裏返しなのでしょうか。
 しかしお陰様で、「徐さんの中国株」は依然アクセスが多いことは、執筆者にとってこれより嬉しいことはありません。「お浚いコラム」でもわかるように、取り上げた銘柄が3倍や10倍でも珍しくありません。株価の上昇は中国経済のパイが依然大きいものであることにほかならないと考えられます。しかし、アリババに対する立件調査やアントグループへのヒヤリングでもわかるように・・・
 パイの膨らみ具合が明らかに減速し、アリババの膨張はどこかの利益集団のパイに食い込んでしまったことが立件調査やヒヤリングにつながったのではないかと思われてしまいます。
 アリババに対する立件調査の理由は独禁法違反の疑いいがあるとして、そしてアントグループへの指導は「資本の無秩序な拡張に対する制約を強化する」ためだったとされています。
 今年の7月、米国会でもGoogleやApple、Amazon、Facebookのテック4社について公聴会が行われるなど、米でもIT巨人に対して独占を警戒していますが、アリババの独占行為に対する指摘はやや強引があるのではと考えます。それよりSNS最大手のT社が技術的優位性を利用した排他的行為が多くのイノベーション企業をないがしろにした過去を重要視すべきかと考えます。アリババとアントグループが標的にされたのは、アントグループの拡張は銀行、中でも国有銀行の利益を明らかに侵食したことで、これ以上放任すると、国有銀行のパイがより一層狭まれてしまう懸念があったからだと考えられます。
 その理由として外為管理局長を兼任する中央銀行の潘功勝副総裁のメディアの取材に対する回答からも伺えます。潘副総裁は28日、アントグループに対する指導の具体的内容を次のように述べています。
▽決済の本業に回帰し、取引の透明度を高め、不正な競争を行わないこと
▽法律・法規に沿った個人信用調査業務を行い、個人情報を保護すること
▽法に基づき金融持株会社を作り、監督・管理要求を厳格に実行し、自己資本の充足と関連取引の合規性を確保すること
▽コーポレートガバナンスを改善し、規定に違反した信用貸付や保険、資産運用などの金融活動を厳格に是正すること
▽法律・法規に基づき証券・ファンド業務や資産証券化業務などを行い、証券関連機関のガバナンスを強化すること。
 アントグループは「金融」という名詞(属性)を外していますが、業務のほとんどが金融そのものであり、法的抜け道をすり抜けるのではなく、きちんとライセンスを取って法的範囲で業務を進めなさいという内容でした。
 このように考えると、取り締まりは一時的なもので、改善策を取ったらアリババもアントグループも「金融のインフラ」と認められている以上、従来通り成長していくものと考えられます。ろうばい売りもあったアリババの件は年越しすることなく一見落着と考えて宜しいかと思います。
 中国株は業績のみならず、政策に影響される部分も大きいと考えます。中国株について、迷ったら「徐さんの中国株」をぜひお読みください。来年も引き続きとことん解説して参ります。
 皆さんもどうぞ良いお年をお迎えください。

 

 

 

 

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