SDR加入は遠退いた?

大規模な下支え策で市場の総崩れを何とか防いだのですが、3週間で指数が30%以上も下落し、市場から20兆元(約3兆2千億米ドル)もの虎の子が消えてなくなったのです。3兆2千億米ドルと言えば、ユーロ圏を悩ませているギリシャの国内総生産(GDP)の約10倍の規模になることを考えると、市場の恐ろしさを改めて認識させられます。 

しかし、お金は市場が「恐慌」から回復次第、元に戻る可能性はありますが、信頼が揺らぐと、一朝一夕では回復ができません。 

緊急措置が打ち出された今月9日、東京で「中国勉強会」を行いました。前日上海深センともに暴落し、香港市場も巻き込まれて大暴落に見舞われました。9日の勉強会開催の直前まで、政府から新しい緊急対策が立て続けに発表されました。その内の一つに、上場企業の大株主や保有株式5%以上の株主、役員、監査役及び高級管理職は過去6ヶ月以内に株式を売却したことがある場合、証券会社、ファンド経由で自社株を買い戻すことは、「証券法」の禁止条項に抵触しないとあります。 

投資視察団で企業訪問を打診する際、断られる理由の最も多いことには、訪問時期が決算発表の直前に当たり、投資家に面会することは規則で禁止されることでした。7月9日と言う時点はと言えば、ちょうど上半期を過ぎ、決算が締め切る時期で業績の良しあし(増益か減益か)も判断できる時期です。通常、ロックアップ期間としてインサイダー情報を知る立場の関係者が売買禁止の期間です。それを証券委の通達として開放されることになりますので、事の重大性を勉強会で早速指摘しました。 

それよりも、中国が求めている人民元国際化のプロセスはまた遠退いだのではと懸念しています。年末にIMFのSDR(特別引出権)に人民元を盛込むかどうかについて5年に一度の見直しが行われます。ほぼ確実視されたSDR加入はこれでかなり変則的になったと考えます。 

これら懸念を打ち消すために、今年の前半に相次ぎ打ち出された香港への資本誘導――基金の相互承認、ファンドや年金基金の香港株投資解禁、深セン・香港株の直通車などが加速されるだろうと考えられます。 

政府の対策により、金融危機が一旦回避されましたが、失うものもかなりあったと考えます。しかし人民元の国際化という国家的課題はここで放棄したとは考えられません。香港経由の資本の自由化は一番の近道です。努力して年内のSDR加入を実現するか、更に次なる5年を待つか後半が正念場です。 

 

 

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